ゲーム「クロノクロス」より、BGMの1つ「星を盗んだ少女」をオマージュした絵を描きました。
メイン登場人物「キッド」のメインテーマと言って差し支えないかと。
キッドが過去を振り返るシーンや、彼女の生い立ちを知るシーンで流れる曲ですね。
切ないストリングスと、後半のみとせのりこさんの透き通ったスキャットが、孤独な夜を何度となく過ごしてきたであろうキッドの、夜の闇に溶けないように、悲しみや孤独に抗い強く生きようとする姿と重なります。
巨大な運命に翻弄され、星の生命すらも背負うこととなった少女。
慈悲無き炎鬼は燃え上がり、昨日まで大切していたものは焼き尽くされ、奪い尽くされた。
名を与えてくれた愛する人も、彼女の目の前で、ただ成す術もなく悪魔の大猫に連れ去られてしまった。
耳を塞いでも聞こえる炎の鳴き声を振り払いながら、
守り続けてきた平穏が瓦解する臭いを払い除けながら、命からがらそこから、逃げるしか無かった。
逃げ延びた丘から、火の塊を見下ろす。
そこには確かにあった。彼女が帰るべき場所が。
彼女の帰りを迎え入れてくれる、その場所が。
黒い息吹を上げて帰る場所を飲み込む火の塊を、荒い呼吸で見つめる彼女。
見つめる先にある火の塊の如く、慟哭と怒りで燃え滾るその身の炎に、焼き尽くされそうになりながら。
彼女は、彼女を救い出した彼も、もう間もなく、居なくなることを知る。
何処から訪れた、名も知らぬ、自分を愛する人。
夜風に当たった彼の頬にそっと、その存在を確かめるように手を触れたなら、
炎に滾るその身は、ひんやりと癒やされていく。
そうして、彼は多くを告げずに元の場所へ帰る。彼女とまた、会えると、信じて。
幼いその胸に、その別れを必死で拒みながら。
彼と再会できることを、もう一度望みながら。
星の盗んだ少女の孤独な夜は、そうして、始まった。